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NPO法人エコ・ギア 吉井川源流調査      小河川の調査報告(その1)
 目次 :  (その1)  T小谷川   U 野原川   V まとめ  /   (その2)小谷川・野原川の補足調査


V まとめ

1. 小谷川と野原川とは当初私達が期待していたような“村の小川“ではありませんでした。
それは、
(イ)
(ロ)
上流の流域面積から予期していたよりもはるかに流水量が少なく、 
コンクリ−トや古い石垣で固められた狭くて深い川筋が単なる排水路の役割を受けもっているように見受けられるものでした。(針葉樹の植林が進み過ぎた結果として排水路としての役割が大きく要求されるようになった結果でしょうか。)

2.  川の各所に設けられた小規模の井堰は、川沿いの耕地などに給水する仕組みで、段差もなるべく小さくして魚やオオサンショウウオなどの遡上を妨げないようにとの配慮がなされているように見受けられます。
但し、それにはもっと豊かな水量が保たれていれば・・・
と思わずには居られません。これについては村の人も『スギの林が沢山の水を吸い上げてしまい、また広葉樹を失った山腹の保水力が小さくなったことに依るのであろう。』と考えているようです。


3.  集落附近では川底がコンクリ−トで平らに固められています。出水時の崩落を予防する目的の為であろうかと思われます。私達の立場から言わせて貰えれば、せめてコンクリ−ト底面に礫を埋め込んで 凹凸をつけ、上流から運ばれてくる砂礫の一部を其処に引き止め
られるように出来なかっただろうかと惜しまれることです。砂礫の溜りが形成されれば、そこに水藻や水草かを育って小形の生物(ホタルや魚など)の棲息を可能にする環境を保ち得たではないでしょうか。小谷川では以前、ヤマメやゴトノボ−(大人の指ぐらいの大きさの黒っぽい魚)などを釣ることができたとのことです。

4.  私達3人がゆっくりと川の観察を続けている間に、何人かの村の人が立ち止って、あれこれと話をする機会が得られました。
 村の人は、
(イ)

(ロ)
過去の川と現在の川を比較して話して呉れました。私達には現在の川の様子しか見えませんが、 
実地を見ながら其の人達と意見の交換ができることは極めて有意義なことと思われます。(観念的に自然保護を訴えるのとは大変な違いがあります。)
 前村長さんの話の中に『コンクリ−トが多過たでしょう・・』との言葉がありました。これには『コンクリ−ト護岸はなるべく少なくしたかったのだが・・・・』との気持が込められていたと受け取れました。村長の立場からは村の人や県の施工者に直接そのような主張をすることが憚られたと解された次第です。若し村の人の方からそのような意見が出されて居れば、村長さんとしてももっと強く御自分の意見を押し出すことが出来たであろうと想像されます。私達としては、なるべく村の人との意見の交換をする機会を求めて行くべきであろうと思われる次第です。

5.  前回の台風による倒木被害は東粟倉でも大変なものでした。(これに就いては別に濡木、小笠原の両氏による報告があるかと思われます。)すでに新たな植林の計画が進められていると聞いて居りますが、私達の立場からの所見を述べて見たいと思います。
(イ)

(ロ)

(ハ)
被害地の針葉樹林に替えて広葉樹林を育てることができれば「禍いを転じて福と為す」好機であると考えては如何でしょうか。 
山腹の低地は個人の所有に属している事が多く、従って新たに植える樹種は将来の収入を約束できるものでなければいけない。
この地域は野生鹿の増加が著しく(去年1年では鹿89頭を駆除)、それに依る食害を考慮する必要がある。


(イ)、 (ロ) の2点から見て適当と考えられる樹種を列挙して見ると
ケヤキ:低地の谷沿いで良く育つ。
ハリギリ(別名センノキ)生育が早く、良材が得られる。応接間の卓など美麗。
    古く備前藩では“留め木”のひとつに挙げて保護されていた。その割に
    自生しているのを見ることは少ない。
エドヒガシ:醍醐桜に代表される丈夫な櫻。上手に育てれば良材が得られる。
イタヤカエデ:素直に成長する材質の良い樹。大山の沢の礫地にさな実生が沢山
    生えている。(其処では成長困難、移植によろしい)
クヌギ、コナラ、クリ、トチ:これらは秋に新しい実を拾い、ビニ−ルの袋に
    入れて冷蔵庫に保存して置けば、そのままで3月にはほぼ100%発芽して
    いる。クリは実が大きいので3年目には確実に新しい実をつけるぐらい
    に大きくなる。
その他にヤマグワ、キリ、シナノキ、シオジなども良い材が得られる。

(ハ)の野鹿による食害を防ぐ方法として、先ごろテレビで放送されたことであるが、クリの木を高い所のスギ林の間など(倒木の被害地などでもよい)に植えて置けば、野鹿は其処で餌を摂るので低い所までは降りて来ない。(野鹿を高所に留め置く)。柿の苗なども同様に利用できるであろう。鹿だけでなく熊もこうして高所に留め置くことが出来るのではないでしょうか。高い所にこれらの樹を植える労力はボランティアの協力が望まれるところです。


(2) 小谷川・野原川の補足調査

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