2004年11月27日
水俣病問題が混乱した理由について
−とりわけ今後の厚生行政・環境行政を見据えて-
岡山大学大学院・津田敏秀

1 水俣病は食中毒事件である−これは熊本県も国も認識していた
  1956年5月 第一号患者の届け出
  1856年11月 食中毒であることが分かる−原因食品が判明
    その後一度も疑われていない−アミン説・機雷説
食中毒統計の用語:原因施設・原因食品・病因物質
         対策には病因物質の判明を待ってはならない

2 水俣病事件の食中毒事件調査報告書はない−これ自体が法律違反
  食品衛生法を適用しようとした熊本県を阻止したのは国
  理由:「全ての原因食品が汚染されている証拠必要」
    −このような証拠が示された食中毒事件はない
    −森永ヒ素ミルク中毒事件
    −浜松あさり貝事件(自家採取を禁じ、効果があった)
  鹿児島県では食中毒事件の届け出もあった
  適用されていれば患者は50人−三重大学・吉田名誉教授

3 当たり前の食中毒事件処理が行われなかったために不知火海沿岸に拡大
  工場の排水が続いていても魚を食べなければ中毒にならない
  食品衛生法が適用されるには漁民への補償か必要というのは根拠なし

4 認定問題
4-1 食中毒事件での食中毒患者−曝露して発祥した人
4-2 食中毒事件での診断−喫食調査と症状の調査(ほとんどコストがかからない)
    −患者の診断(下痢便の確認はしない)
4-3 水俣病事件での認定制度(現行は52年判断条件に基づく)
    −食中毒事件で認定申請など聞いたことがありますか?
4-4 水俣病事件での認定のための検診
    −ひとり約30万円の税金、一週間の検査
    −最低6〜7年の待ち時間
4-5 水俣病事件での環境庁の見解




半分の蓋然性で認定(実際は蓋然性ほぼ100%でも認定されていない)
52年判断条件は医学的に正しい(根拠は全くなく逆に正しくないという証拠しかない:医学は一応自然科学)
この型の感覚障害は、非曝露地域では、ほとんどない症状
ボーダーライン(グレーゾーン):実際は限りなく黒に近い



5 医学者の使い方
5-1 環境庁、チッソ、昭和電工は、「お医者さんに聞いてください」
5-2 医学者はわからない
    −半分の蓋然性で、認定すら分からないのでは?
    −100%の蓋然性なら食中毒患者・公害患者などいなくなる
    −研究の仕方も分からないのでは?
5-3 環境庁・熊本県から莫大な研究費
5-4 患者側に近い研究者の締め出し
5-5 現地の調査をしない(させない)珍しい食中毒事件・公害事件
5-6 医学界の総意という大嘘
    −日本精神神経学会による一連の見解
精神経誌(2003)105巻6号 学会活動報告
水俣病問題における認定制度と医学専門家の関わりに関する見解
  −平成3年11月26日付け中央公害対策審議会「今後の水俣病対策の
   あり方について(答申)」(中公審302号)−

              日本精神神経学会・研究と人権問題委員会 (平成15年3月15日)
5-7 法学者の関与
5-8 「政治解決」根拠となった2論文

6 平成3年中央公害対策審議会・議事録
 −環境庁・学者も患者側の言い分が正しいことを知っていた
 −裁判での主張はウソだった
 −詐欺にひっかかった「政治解決」(重要な情報は隠されていた)
 −見舞金契約の再来

7 今後の食中毒事件のために−最高裁判決評価に加えて
 −水俣病事件の倫理が通ったら食中毒行政はできなくなる
 −水俣病の教訓が生かされず、水俣方式が輸入されたカネミ油症事件
 −食中毒事件の患者が自分は原因食品を食べ症状が出たということを言っただけだが
  それを認めず、賠償請求権まで奪った
 −民事裁判という形式だが、これは明らかな人権侵害


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